社会人の基本とされる報連相(ホウ・レン・ソウ / 報告・連絡・相談)
「"ホウレンソウ"ができてない!」と言われたことはありませんか? 社会人として、最初に習った、という人も多いのではないでしょうか?
仕事をするうえで、最低限のマナー、仕事の基本、という風に扱われることもありますよね。
↑おいしそうな"ほうれん草"ですね(笑)
基本が簡単というわけではない
ですが、この報連相、難しくないですか?
上司といつも顔を合わせていられるわけではないですし、合わせたからと言って、十分に時間が取れるかどうは別問題。「そんなのは後で」だとか「優先順位を決めて」なんて言われてしまうこともシバシバです。
報連相、こなすのは大変だぞ…と思うのですが、そもそも…そう言っている上司の方も報連相がしっかりしているか…というと、疑問だったりします(笑)。
会社でも「課」だったり「島」同士の連絡・調整がうまくいっていない、なんていうのは日常茶飯事ですし、「まだ連絡が来ていない」「こっちに先に話をするのが筋だろう」「○○課が相談もなく勝手に決めやがって…」などなど、報連相の問題があちらこちらに見え隠れ(というか隠れていない、丸見え!)だったりします。
ところで、そもそも報連相の意味、間違っていない?
そのように考えていくと…報連相、難しくないか…? に行きつきます。
ですが、実は「報連相」が提唱された際、今使われている「社会人の基本」「最低限のマナー」とは、意味がまったく違っていたのです。
「『報・連・相』を通してみんなから今何を考え何を行っているのか教えてもらわないと、上司も状況判断ができない」とある。
ほうれんそうは「上司の状況判断に必要な、部下からの自発的な情報伝達」と解釈されているわけだ。
確かに、このように解釈されていますよね。でも、引用元の記事名は『あなたの「ほうれんそう」は間違っている』です。
どのように間違っているか調べてみると……。
「上司の状況判断に必要な、部下からの自発的な情報伝達」を習慣的に行わせるためのしつけとして捉えられているが、そもそも、提唱者の山崎の著書では、
管理職が「イヤな情報、喜ばしくないデータ」を遠ざけず、問題点を積極的に改善していくことで、生え抜きでない社員や末端社員であっても容易に報告・連絡・相談が行える
風通しの良い職場環境をつくるための手段として報連相を勧めているのであって、部下の努力目標ではない。
という風に、書かれています。
部下の目標やマナーや社会人としての常識ではないのです。
風通しのよい職場を作るための手段なのですから、むしろ「報連相」ができていない! と責めを負うのは、職場の「上司」ということになってしまいます。
「お前は部下が報連相を気軽にできるような職場環境を整えているのか?」
ということですね。
そもそも報連相では仕事の「効率」は上がらない?
また、報連相ができている、できていない…と語られるときに良く付随してくるのが、「効率」や「成果」の問題です。
部下がしっかりと「報連相」ができていないから、仕事の効率や生産性が下がる、という論調です。
でも「成果」については無印の松井忠三氏がインタビューでこんなことを語っています。
(インタビュワー)「報(ほう)(告)・連(れん)(絡)・相(そう)(談)」は、いらないとも書かれています。
(以下、松井氏)これは成果が出ない。
営業会議の指示の内容を1日ぐらい置いて店舗の末端のアルバイトやパートの人たちに聞いてみると、1割や2割しか伝わっていない。コミュニケーションはそんなものだと思ったほうがいい
というように報連相を情報伝達の手段として使っても(この場合は上から下の伝達です)、1割~2割しか伝わらない、というのです。
自分の周りを見渡しても…。当てはまりますね(苦笑)。
実態を把握するには、店舗を実際に見てきた方がいいという訳です。
そもそも提唱者の山崎氏が効率や生産性を直接上げるために「報連相」を提案した訳ではないのですから、「効率」や「生産性」のために使おうとしても上手くいかないのは当然、と言えば当然です。
↓にある記事から引用した漫画を取り上げています。実際に部下が「報連相」を行おうとすると…。良く遭遇するアルアルがまとめられています。思わず笑ってしまいますね。
報告…上司が不快に思う情報は無視される
連絡…情報共有はあまり重要視されません
相談…自分で考えろと言われます今うなずいた人、いましたね…はっきりと見えました(笑)!
リーダーシップの古典・PM理論
「報連相」をはじめとして、上司と部下の関係、そして効率・生産性…、一筋縄ではいかない難しいものがあります。あるからこそ、リーダーシップや組織に関する研究が数多く行われてきました。その中でも古典の一つとして、PM理論があります。
1966年に社会心理学者の三隅二不二(みすみじゅうじ)が提唱したリーダーシップに関する理論で、組織内で発揮されるリーダーシップを
- P=パフォーマンス「目標達成能力」
- M=メンテナンス「集団維持能力」
の2つの能力に分け、図で表したものです。下図は、PM理論を模式的に現したものです。
大文字のPとM。小文字のpとm。この4つを組み合わせて
PM、Pm、pM、pm の4つの「窓」を作っています。
- Pは目標達成へのパフォーマンスが強いリーダー。
- Mは組織・集団維持のメンテナンスが強いリーダー。
(小文字p,mはそれらが弱いことを表しています)
もちろん、PもMも優秀(PM型)、というリーダーシップが発揮されれば、それは理想ですが、実際は、そうはなかなか行きません。
PもMも弱い「pm型」であったり、PかMかどちらか一方という「P型」「M型」というリーダーシップが発揮されている場合も多くあります。
そのような中で、報連相はP(パフォーマンス)ではなくてM(メンテナンス)に比重を置いて考えられた「上司(マネージャークラス)」への組織運営の目標、と言えるでしょう。
報連相を組織で浸透させる心得”ほうれん草の、お・ひ・た・し”
組織の良好な人間関係を念頭に提唱された報連相ですが、では、具体的には、どうすればいいのでしょうか?
どうすれば、部下が気軽に「報告」「連絡」「相談」できるような組織を作り上げることができるのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれる、素晴らしいポスターがありました。
以前Twitterに「報連相(ほうれんそう)」を越えた「ほうれんそうのおひたし」と言う素晴らし言葉があったので、部下の子にパワポでポスター作って貰った(^^)。ラクスルから印刷されたポスターが届いたけど、よい感じです( v^-゜)♪ pic.twitter.com/HcGK4qrUGK
— アララ~キ~@お食事前には手を洗いましょう✋🧼 (@sarumaryuto) April 3, 2018
報・連・相に部下の報連相に上司・先輩が心掛けること、として「お・ひ・た・し」がプラスされています。
お…怒らない
ひ…否定しない
た…助ける
し…指示する
これは、まさに上司が部下に接する態度を表しているのではないでしょうか?
怒らず、否定せず、助け、指示する。
そして、報連相を提唱された山崎富治氏の目指した「風通しの良い職場」につながる発想になっています。
”風通しの良い職場”、それが結果として、上司が部下の力を引き出した恐ろしい言葉でも例として挙げたように、部下が思いもよらぬ解決策を持ってきてくれる……こともあるかもしれません。
最後にダジャレで…。ほうれん草のソテー! はいかが?
今まで見てきたように、報連相そもそもの目的はマナーでも常識でもありませんでした。「効率」や「生産性」とも目指す方向が違います。
ただ、方向が違ったとしても、この「報連相」や「ほうれん草のおひたし」を私たち一人一人の心掛け次第で「効率」や「生産性」を上げる/改善する方向にも応用することができるかもしれません。
もし、報連相をPM理論で言うところの"P(パフォーマンス)"よりに運用しようとするのであれば、例えば次のような方法が考えられます。
(提案)を、それぞれにそっと添えてみる、のです。
報告(+少し提案)/連絡(+少し提案)/相談(+少し提案)
を意識してやってみることで、「効率」や「生産性」、そして何より事柄に取り組む「自発性」を上げてみよう、という試みです。
名付けて
「ほうれん草のソ(っと)テー(いあん)!」
……太字で書きましたが、語呂がうまく決まりませんでした(苦笑)。このダジャレを言いたくてここまで頑張って書いてきました(笑)!
報連相の機会、というのは、折角上司と話ができる機会でもあります。折角の機会です、自分の成長の機会にしてしまいましょう!
★今日の試してみたいことメモ★
もし上司なら
- 報連相はもともと「社会人の常識」として提案されたものではなかった。
- 報連相は社内の風通しを良くするためのもの。
- 報連相の覚悟を求められているのは、部下ではなく、上司。
- 果たして自分の職場は、報告・連絡・相談が風通し良く行える状況になっているだろうか? と自問してみる。
- 「報連相の"おひたし"」を自分に課すことを目標にしてみる。
もし部下なら
- 報連相はもともと「社会人の常識」として提案されたものではなかった。
- 自分の職場で報告・連絡・相談がやりにくいと感じるのであれば、一度原因を推測してみる。
- その原因を解決するために、今日できる「初めの一歩」は何か考えてみる。
- 実際に行動してみる。
番外編:もし部下で、報連相がうまくできず大変な目にあっていたら(以前の自分に、です…)
- 会社で「報連相」が上手くできず、上司に罵られ、苦しんでいるとしたら…。
- 私たちは(もちろん声を大にして"私も"です…)そもそも、みんな"大馬鹿野郎"だということを思い出してましょう。
- もし「報連相ができていない!」と罵られても…馬鹿に馬鹿と言われても…、対してダメージはないですよね?
- なぜならあなたの上司は「報連相」の本当の意味も知らずに声を荒げる「程度」の上司、なのですから。
- そして、同時に、私たちも「本当の意味も知らずに」毎日いろいろな言葉を発しています。
- ハンロンの剃刀(無能で十分説明されることに悪意を見出すな)を思い出してみましょう。
- そのうえで、会社でどう人間関係を関係を作っていくかは、「口撃」を受け流してから(笑)、ゆっくり考えていきましょう。
- まずは、生き残ること!