なぜ? ファーストクラスで盗難??
飛行機のファーストクラスで盗難(備品持ち帰り)!と聞くと「え、なんで?」と思って首を捻ってしまいます。捻ってしまいますが、実際に高級ブランケット、パジャマや高級アメニティなどが持ち出されており、航空会社も頭を悩ませているとのこと。
「機内に固定していない物ならほぼ何でも、どこかの時点で持ち去られる」
何かの格言風ですが、かっこよくないですね(苦笑)。
この航空会社では、あまりに持ち出されるのが「標準」になってしまったために、
ソルト&ペッパー入れに至っては、あまりに持ち出しが当たり前になってしまったので、皮肉たっぷりに「ヴァージン航空からの盗品」とのロゴを付けているくらいだ。
という状況。こんな皮肉ができるのも面白い、といえば面白いのですね。こういう洒落は大好きです。でも、やられた航空会社としては、いくらファーストクラスの「お客様」が巨額の利益をもたらしてくれるとは言え、持ち帰られる度に補充もしなければいけませんし、金額以上に手間がかかる…。歯痒い思いをしているのではないでしょうか。
ちなみに、こちらが、実際のソルト&ペッパー入れです。飛行機を模した可愛いデザインですね。足の後ろに "pinched from virgin atlantic"の文字が(苦笑)。
私は、エコノミークラスしか乗ったことがないですが「ブランケット温かい!ほしい!」と思いました(あ、嘘でした…。国内線ですが、ダブルブッキングでビジネスクラスにアップグレードされたことがありました…。たった1時間のフライト。ビジネスクラス、全然満喫できませんでした、残念!)。エコノミークラスのブランケットとは品質もきっと違うのでしょう!
ファーストやビジネスクラスの座席は何千ドルもかかるのだから、アメニティーを自由に手荷物に入れて持ち帰る権利がある――乗客は、そんな感覚をお持ちのようだ。
と、上述の記事では、皮肉交じりに書かれていました。もちろん、ファーストクラスに乗る人がみんな盗人なのでしょうか? そんな訳はないですよね(苦笑)。
車を運転すると豹変!という状況ってありますよね。
ファーストクラスを利用できる人々です! 毎日「盗人」になっているわけではないのに、しかも「盗人」になる必要もないぐらい稼いでいるのに…、「盗人」になってしまう(人もいる……意外と多く??)というのは、なぜなのでしょうか?
↑の発言"アメニティーを自由に手荷物に入れて持ち帰る権利がある"という言葉にヒントがありそうです。
いつもは「普通」、むしろ謙虚でおとなしい人だと思っていたのに、車を運転すると、途端に態度ばかりか「別人格」をインストールされたのか? と驚きで固まってしまうこと、ありませんか?? (ちょっと、前の車、煽っちゃダメ!!)
そういえば、ある恩師からアドバイスされました。「結婚相手を探すときには、相手に運転してもらえばいい。その人の本性がでるから。いつもはおとなしいのに、車の運転になると豹変する場合は…悪いことは言わない。やめておけ。人生を棒に振る」
(そう語った恩師の目には哀愁が…もしかしてご自身の経験??…あんなにやさしい奥様が?? …うん、深く考えるのは、やめましょう)
会社で権力を持つと変わる。
「普段は○○なのに、状況が変わると…」という例は、何も「車」だけに留まりません。
会社の中にもいませんか? 昔は、社内で立場の弱かった人が、何かの拍子にひとたび出世し社内権力を手にすると、「あの謙虚さはどこへ~」とばかりに、横柄になってしまうことが…。
立場が人を作る、とはよく言いますが、「あんなに気が弱そうだった3代目社長、みんなが心配したけれど、なんだ、就任したら意外と、いや…なかなか立派に会社の指揮を執っているじゃないか…」。
そんなことが起こったりします。
そんな大きな変化でなくても、毎日、出勤のためにスーツを着ると、何となく気が引き締まったような気がする…。そんな変化は、私も毎日のように感じています(笑)。
このように、自分が身にまとったものに"引きずられて"別人格が生まれてしまう。これはドレス効果と呼ばれます。
車の運転であれば、車の性能
- (人が走るより)速い!
- (人が運ぶより)馬力がある!
- (人よりそもそも)車体がデカい! ……などなど
のイメージを無意識に自分と重ね合わせ、身にまとった(=ドレスを着た)感覚になり、いつもとは違いまるで「別人格」を生み出してしまったような状況になる、ということですね。
名前もドレス効果、とありますが、実際のドレス=服である必要はありません。その人の
- 着ている服(だけでなく)
- 会社や地域での立場
- 誰と結婚しているか云々…といった家族構成
- 自分が自由に使える所有物
- 受けているサービス(ファーストクラスの利用、などこれですね) ……などなど
その人を取り巻く環境そのものがドレス、となり得ます。
ドレス効果と逆ドレス効果
そして、興味深いのは、このドレス効果は、反対に”逆ドレス効果”とも呼べる状況も存在するということです。
例えば、先ほどの車の例を挙げると…、
普段はスポーツカーや大きな車に乗っている人が代車などで軽自動車に乗ると、“逆ドレス効果”が生まれることがあります。
車に大きな車に乗っていて、気が大きくなったり、乱暴になったり、煽り運転をしていたり…、強気に出ていた人でも、小さな車に乗ることで、弱気になってしまうことがあるのです。
例えば、スタンフォードの監獄実験(Wikipedia)では、実験のために集められた普通の市民が、囚人の服をや扱いをされると、より囚人らしく、そして"弱く"、看守の服や立場を与えられるとより看守らしく、そして"強く"振舞っていった、というのです。
スタンフォードの監獄実験を扱った映画「es」(エス)がありますが、鑑賞すると、人間の狂気を見せつけられ"苦しさ"を感じ居心地が悪くなります(素晴らしい映画ですが)。
私たちは、どのようなドレスを身にまとうのか?
ところで私たちは、と想像してみると、本当にいろいろなドレスを身にまとっていることが分かります。一日の間でも、何度も着たり脱いだりを繰り返しています。
If You Act the Genius, You Will Be One. (天才のようにふるまえば、天才になる)
サルバドール・ダリ
あの髭が特徴的なサルバドール・ダリの名言ですが、これもドレス効果を端的に表現しています。
○○に近づきたい! ○○になりたい! と思うのであれば、そのように振舞えば(=ドレスを着れば)いいのです。
そして、怖いのは、無意識で着ているドレスに気づかないこと。
ただし、どんなドレスを着ているかに無頓着・無意識で気づかないと…ちょっと厄介かもしれません。
気づかないうちに、どんどん望まない方に近づく「ドレス」を着てしまっているかもしれないからです。それも自然に、習慣的に…。
ダリの言葉を借りれば、「天才になりたい。でも着ていたドレスは平凡だった(だから凡人どまりだった)」ということでしょうか。
彼の言葉を聞いた後だと、あの髭は、自分を「天才」たらしめる「ドレス」であったように思えます。
もし、穏やかで落ち着いた生活を送りたい……。そんなことを考えながら、朝伸びをしながら最初に向かったリビングは、掃除をしたのが果たしていつ?? 視界の端には綿ボコリが見え隠れ。流し台には、昨日の食器が…。テーブルにも食べかけがそのまま…。あれ、ハエが止まってる…。
そんなドレスを、普段の習慣から惰性で着てしまっているのかもしれません。果たしてそのドレスは、穏やかで落ち着いた生活に自分を近づけてくれるものとなるのでしょうか?
- 意識して新しいドレスを着てみようと意気込むのも大事。
- それと同じぐらい、無意識に着てしまっているドレスが本当に自分の望むドレスなのか、ちょっと立ち止まったみるのも大切。
なのかもしれません。
無意識に着ているドレスに、気づくためにも、まずは今日の帰り道、いつもの通勤路をちょっと変えて、日常の中から気づきを引き出してみるところから始めてみるのはどうでしょうか? 何かが変わるかもしれません。
★今日の試してみたいことメモ★
- まずは、自分が着ているドレスを発見する。
- 自分の気分が"上がるとき"、"強気になるとき"、はどのような時か思い返してみる。
- 反対に、自分の気分が"下がるとき"、"弱気になるとき"、はどのような時か思い返してみる。
- それをもとに、今日、どのようなドレスを脱ぎ、どのようなドレスを着るか、決める。
- 実際にドレスを脱ぐor着てみる。
- どのような変化があったか、よく観察してみる。