精神を見つめる

労働の奴隷となるか、それとも、生きるための乞食か。

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奴隷 or 乞食?

奴隷と乞食、刺激的なタイトルですが、これは、『依頼人は死んだ』(若竹七海著)という小説にて投げかけられる喩えです。

主人公の葉村晶は生きづらさを感じながら探偵事務所で探偵のまねごとをしながらアルバイトをしている29歳の女性です。

物語の冒頭、その探偵事務所の所長から「正社員にならないか?」と誘いを受けます。願ってもない話、と飛びつくと思いきや、考えた末、彼女はその話を断ります。

「自販機で銭ゲバゾンビ」の写真[モデル:大川竜弥]

彼女は「正社員」としてではなく「フリー」として生きる道を選ぶのです。

その決断を聞いた所長が彼女に語りかけます。

「だけど、葉村くん、こういう話を知っているか?」

「世の中には奴隷と乞食の二種類しかいない。奴隷は自由がないかわり、食うには困らない。乞食は自由だが、飢えて死ぬこともある」

所長は「正社員」であれば、生きていける。でも、「アルバイト」であればどうなるかない、と彼女に諭します。

そして、

「他にもっと優秀な女性スタッフが現れたら、仕事はなくなるということだ。その覚悟は――できてるのかな」

厳しい言葉です。

この言葉を受けて、彼女(晶)は“顔が強張った”そして“やはり、きつい”と反応しています。

正社員になれるチャンスはそう多くないこと、自分は別に才能や容姿に特段恵まれているわけではないこと、など、十分に分かっている・・・でも首を縦に振れないのです。

(文庫版の出版は2003年、当時の就職状況ですと、そうなのかもしれません)

どちらの生活に憧れる?

実は私も同じような経験がありまして、「アルバイト」から「正社員」に誘われたことがあります(探偵事務所ではありませんでしたが(笑))。

その時も晶と同じように首を縦に振れませんでした。勇気が足りなかったのですね。

もちろん、どちらの生き方が良い、悪いではありませんが、この所長の言葉を読んだとき、昔を懐かしく思い出してしまいました。

「奴隷」と「乞食」という刺激的な言葉ではありますが、どのような生き方を選択するのか、したいのかをもう一度問いかけてくれる言葉になっています。

私は、長く「奴隷」に憧れる生活をしてきました。どちらかの生活が長いと、もう一方の生き方があることを忘れてしまいます。

実際に「奴隷から乞食」or「乞食から奴隷」にシフトするかどうかは別にして、自分の人生を変えたいと思ったとき、選択肢すら思い浮かばず、狭い視野の中で必死に暗闇を進んでしまうこともあります(その闇の先は、さらなる暗闇かもしれません・・・)。

まずは、ちょっと肩の力を抜いて、違う「生き方」もあるんだ、と思いを巡らしてみるのも頭と心を休めるきっかけになるかもしれませんよ?

★今日の試してみたいことメモ★

1.今、自分が生計を立てている仕事が「奴隷」なのか「乞食」なのか考えてみる。

2.もし、その反対の生き方をするとするなら(「奴隷」なら「乞食」、「乞食」なら「奴隷」)、どんな生き方・仕事があり得るのか、夢想してみる。

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