緊急事態宣言と特定警戒都道府県の指定
ご存知の通り、新型コロナウイルス感染症のため、4月7日に緊急事態宣言が発令されました。
対象地域は以下の7都府県です。
4月7日に緊急事態宣言の7都府県
東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡
そして、16日には、対象が全国へと拡大されています。それと同時に、先に発令されていた7都道府県に6道府県を加えた13都道府県が「特定警戒都道府県(※太字は追加の6道府県)」に指定されました。
特定警戒都道府県
東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡、北海道、茨城、石川県、岐阜県、京都、愛知
欧米で言われるところの「ロックダウン」とは違う。
ただし、緊急事態宣言が出された場合でも、生活をする私たちに届いて来る政府の声としては、「要請」ベースで、具体的に、○○をすると「罰せられる」ということは、言われていません。
私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?
都道府県知事は、住民に対して、期間と地域を定めた上で不要不急の外出を自粛するよう「要請」できます。
ただし、▽医療機関への通院、▽食料の買い出し、▽職場への通勤など生活の維持に必要な場合は除くとされています。
外出の自粛はあくまでも「要請」で強制力はありませんが、国民は対策に協力する努力義務があります。
市民への直接の罰則を伴った「指示」ではありませんが「努力義務」と表現されています。
また、学校や事業者などに対しては、以下のように「要請」だけでなく「指示」まで踏み込むことができます。
行政の指示や命令などの権限が強化されるものの例
・学校や福祉施設などの使用停止の要請や指示
・音楽やスポーツなどのイベント開催制限の要請や指示
・臨時医療施設の土地や建物の強制使用
・医療用品やマスク、食品の売り渡し要請、収用、保管命令
・運送事業者に緊急物資の輸送要請、指示
「緊急事態宣言」と名付けられるだけあって、やはり平常時とは違います。けれど、報道でも繰り返されたように
- 「いわゆるロックダウン(都市閉鎖)とは違う」
- 「戒厳令とも違う」
- 「出勤できない、というわけではない」
- 「食料品の買い出しは可能」
と海外の報道に出てくる、外出が禁止され人手が消えた街角、ロックダウン、という状況とは違います。
私たち個人の行動の「自由」や「権利」をできるだけ制限しない方法でコロナと闘う道を日本は選んだ、ということなのでしょう。
ただ、強制力を持たないこれらの宣言でどこまで闘えるか、効果があるか、というところが次の焦点になってくるかと思います。
緊急事態宣言と特定警戒都道府県の指定の経緯を模式図化してみる
今回は、心理学の馴化(じゅんか)を例に出して私たちの心構えを考えてみたいと思います。
※馴化=簡単に言ってしまうと、慣れ、です。
例えば、以下のように都道府県を単純に色分けしてみました。
- ☐☐☐ 特に宣言が出されていない、平常通りの都道府県
- ☒☒☒ 緊急事態宣言が出された都道府県
- ▤▤▤ 緊急事態宣言が出された県の中でも「特定警戒都道府県」
- ▩▩▩ 外国でロックダウンされた都市等
白い ☐ で都道府県を表しています。
イメージとしては、白 → 黒 に従って市民の受ける行動の制限が増えていきます。
☐☐☐ → ☒☒☒ → ▤▤▤ → ▩▩▩
行動の制限。右に行くほど強い。
日本の状況を模式図にしてみると…
~2020年4月6日
☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐
4月6日までは、↑のような状況でした(特に行動制限が呼びかけられていないため47個の ☐ が並んでいます)。中国での感染拡大が連日ニュースになり、国内でも日に日に感染者が増えていきました。
次に、
2020年4月7日~
☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☒☒☒☒☒☒☒
4月7日に緊急事態宣言が、7の都府県に出されました(東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡)。
そして今(2020年4月20日現在)
2020年4月16日~
☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤
4月16日、すべての都道府県に緊急事態宣言が出され、13の都道府県は特定警戒都道府県に指定(東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡、北海道、茨城、石川県、岐阜県、京都、愛知)
となります。つまり↓のように、
☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐
↓
☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☒☒☒☒☒☒☒
↓
☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤▤
↓
今後は????
というように段階を踏んで制限が厳しくなってきています。
確かに日本の法律では「ロックダウン」は難しいことや、生活に与える混乱を最小限にすることを考えると、政府の取った行動を単純に「遅い」と批判だけすることは難しいかもしれません。
例えば、平常時から、一気に全国をロックダウンすると、↓のようになります。↑と比べて、生活への影響も計り知れないものになるでしょうし、私たちの受け止め方も、ショックが大きいものになるでしょう。
☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐☐
↓
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私たちが持っている馴化(=慣れ)という機能
さて、ここで、馴化(じゅんか)を取り上げます。
簡単に言ってしまえば、馴化とは慣れです。
人間は慣れる動物です。どんな強い刺激であっても、日々過ごす中で、慣れてしまいます。
もちろん慣れにはいい面がたくさんあります。いちいち目の前のことに反応してしまっていては、頭も体も疲れ果ててしまいます。節約できる力は節約しないと、燃え尽きてしまいます。
ただしそれが、このコロナとの「戦争」では、どのように作用するでしょうか? 私たちは、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか?
馴化には、次のような特徴があります。
- 強い刺激より、弱い刺激のほうが早く馴化する。
- 複雑な刺激より、単純な刺激のほうが早く馴化する。
- 強い刺激に馴化した場合、小さな刺激には反応しずらくなる。
- 短い間隔の刺激のほうが、早く馴化する。
まとめてみれば、経験からも「当然」の事柄かもしれませんが、今回のコロナウイルスに対する対策を当てはめてみると、どうなるでしょうか。
- 緊急事態宣言は出す、しかし、同時に「ロックダウンではない」という刺激をできる限り弱めて与えました。
- そして、次に第2弾として、範囲を拡大し、特定警戒都道府県という刺激を追加し、
- 短期間に刺激を追加してきています。
私たちが馴化し易い条件はそろっています。
段階を踏むことで、一度に与える精神的ショックを和らげ、混乱を避けるという効果はあります。しかし同時に、緊急事態宣言や特定警戒都道府県の指定で与えた危機感が長続きしない、というジレンマが起こり得るのです。
馴化(=慣れて)しまう = 危機感がなくなってしまう
ことの危険性です。
ではどうすればよいか? まずは馴化があることを知っていこう。
ではどうすればよいでしょうか?
まずは、個人でできることとして、この馴化のメカニズムがあることを一度頭に入れるところから始めるのがいいのではないでしょうか?
京都大学の山中伸弥教授が、新型コロナの情報発信で立ち上げられたサイトには、最初に以下のように書いています。
新型コロナウイルスへの対策は長いマラソンです。都市部で市中感染が広がり、しばらくは全力疾走に近い努力が必要です。
また、その後の持久走への準備も大切です。感染が拡大していない地域も、先手の対策が重要です。私たちが一致団結して正しい行動を粘り強く続ければ、ウイルスの勢いが弱まり、共存が可能となります。
自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守りましょう!
長いマラソンになることが予想されます。
とするならば、少なからず馴化(=慣れ)は避けられません。
ショックと慣れの間でどうにか息切れしないで日々の生活を送っていかなければなりません。
人間には、これまで、地球上を生き抜いてきた機能として「馴化」がある、ということをまずは知り、判断を迫られたときは、「馴化」分を差し引いて判断してると?? という姿勢が長丁場になればなるほど必要になるのではないでしょうか?
今、私たちが目にしているその情報。どのように反応するでしょうか? もし、なんの準備もなくいきなり触れることになったとしたら、どのくらい違う反応をするでしょうか? その差は、どのくらいあるでしょうか?
一歩止まって考えた結果が、もしかすると、私たちや社会を守ることにつながるかもしれません。