新型コロナウイルスの感染者拡大
コロナウイルスの感染者が拡大しています。
2020年3月26日12時現在の情報で、以下の図表の状態です。
特にグラフを見ると、日本もそうですが、特に国外の感染者に関しては、加速度がついたかのような上昇具合となっています。
46万人という数字。一言で言うのは一瞬ですが、「46万」という数字がそれぞれに一人一人の人間であり、一人一人に家族がいて、生活があり、「生きている」という事実を考えると、とにかく一日も早い回復を願うばかりです。
・国内の感染者数 1,387名(クルーズ船を除く)
死亡者数 46名
回復者数 359名・国外の感染者数 460,681名
死亡者数 20,782名
回復者数 120,070名
政府が出す「自粛」のメッセージ
感染拡大を受け、世界各国は、いろいろな対策を打ち出しています。
国によっては、「入国禁止」のみにとどまらず「外出禁止」まで、かなり強制力を伴った対応をしています。
日本も「強制力」はないですが、大規模イベントの自粛や学校の休校、時差出勤、不要不急の外出自粛などが政府からも要請されています(イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ)。
そして、外国からの入国者に対しても、入国後の行動制限が課されています(入国制限措置及び入国・入域後の行動制限/外務省)。
ただし、国民への「自粛」にしても、入国後の「行動制限」に関しても、強制力はありません。あくまで「要請」というスタンスです。
果たして、強制力を持たない「自粛」の「要請」で、本当に意味はあるのでしょうか?
「自粛」の効果を調べる、あるシミュレーション
例えば、以下のようなシミュレーションがあります。
4つの条件に分けて、感染者数と回復者数がどのように変化していくかを示しています。
このシミュレーションの表の見方は↓のようになっています。
- 時間は左→右への流れる
- 一番左の「青みがかった灰色」が”健康な人”
- 下から膨らんでいる「オレンジ色」が”感染者”
- 後半から増える「ピンク色」が”回復者
早速シミュレーションの結果を見ていきましょう。まずは、
感染拡大に対して、何も対策を取らなかった時
感染者は加速度的に増えて、ほとんどの住民が感染し、その後、回復者が増えて、感染は収まっていきます。
後半は、健康な人はいなくなり、すべての住民が、感染者か、回復した人に分けられています。
一気に感染者が爆発的に増えて、回復者が増えることによって、感染者が一気に減るパターンです。次は、
感染者が出た地域を隔離するが、完全には隔離できず、一部は隔離地から感染が広まっていくケース
感染者のピークの山が2つでき、隔離された地域で「感染者」が蔓延した後、隔離地から感染が「外」へ広がったケースです。
行動制限は行われていません。最終的には、町中の全員に感染が広がってしまいますが、何も対策を取らなかった時に比べれば、ピーク時の感染者数は少なくなっています。
また、隔離された地域では、行動の制限をシミュレーション上取り入れていないため、何も対策を取らないときに比べて、初期の感染拡大の速度が速くなっています。最終的には、すべての町民に感染が広がっています。そして、次は、
4分の3の人が、政府の自粛要請を聞き入れて、外出を控えたケース
こちらは、4分の3の人が、自粛を受け入れ、移動を制限しています。4分の1の人は、通常通りに行動しています。
それでも、効果はあり、感染者はずっと町に一定数いますが、感染者数が爆発することはなく「持ちこたえています」。
回復者数も安定して伸びてきていますので、今後は増えて感染者数も落ち着いていくことが予想されます。
先ほどの倍、8人中7人が自粛要請を受け入れて外出を控えたケース
最後に、さらに多くの人が自粛に従い、通常通り動いている人が8人に1人にまで少なくなりました。
ここまで行動している人が少なくなると、目に見えて感染者数を抑えることに成功しています。
なお、これらのシミュレーションは人口200人の町を仮定した、感染のシミュレーションのサイトより、何度でも繰り返し試してみることができます。
(↓のようにアニメーションでシミュレーションすることができます。)
2020/4/13追記
北海道大学の「8割おじさん」こと西浦博教授より、接触8割減が不可欠とのシミュレーション結果が発表されています。
シミュレーションの前提条件
もちろん、これらのシミュレーションでは、
- 死亡者が発生しない点
- 再感染はしない前提となっている点
- 回復者のスピードが一定となっている点
- 医療施設のキャパシティが考慮されていない点
- 他の地域からの流入や転出が考慮されていない点
などが単純化されてはいます。
それでも、一つの参考にはなるのではないでしょうか?
感染拡大を止めることはできないが、緩やかにすることはできる
現在、日本がとっている対策は、特に「強制力」を持っているわけではありません。
「こんな緩い対策で本当に効果があるのか?」
という不安の声も聞かれますし、自粛要請に従わない人や団体への非難の声も見られます。
他国の強制力を持った対策を見聞きすると、余計にそう感じてしまうこともあるでしょう。
それでも、↑のシミュレーションを見ると、「強制力のない」隔離や自粛を求める政策でも、感染者のピーク時の人数を下げることはできる、ということが示されています。
完全に動きを止めることは現実的には難しいかもしれませんが、自粛に従う人がいるのであれば、決して無駄な呼びかけ、ではないようです。
また、シミュレーションの結果からは、
- 対策を取らなければ、一気に感染が拡大する代わりに、それと同じペースで終息する。
- 対策を取れば、感染者数のピークは抑えられるが、終息までは長い時間がかかる。
ということが示唆されます。
終息までの時間を取るのであれば、「対策を取らない」という手段もシミュレーション上はありますが、それだと、感染者数が爆発(=オーバーシュート)した際に医療資源が足りず、医療現場が崩壊し、甚大な被害が出ることが目に見えています。
これでは社会が耐えられません。
医療現場を崩壊させず、経済活動を完全には止められないことを前提条件にするならば、移動の自粛を要請しながら、感染者数を爆発させずにコロナの封じ込めを狙う、長期間に渡る難しいかじ取りが続きそうです。