何かを決断することは難しい…でも、一度決めたことを、撤回することもまた難しいことではないでしょうか。
「決断」に焦点を当てた話は方法論も含めて数多く聞きますが、「撤回」についてはどうでしょうか? 決断ほど重要視されていないように思います。
もちろん「決断」した結果がすべて正しいのであれば「撤回」など必要ないのですが、そうは行かないところが「決断」の難しさですよね。
撤回するのは恥ずかしいこと?
「これにする!…やっぱやめた」
色々な決断がありますが、↑のような会話も、レストランの注文ならまだいいかもしれません(笑)。一緒にお店に入った人に「いつまで迷ってんだよー」と突っ込まれるぐらいです…。
でも、就職・退職・転職だったり…。結婚・離婚だったり…。親子での喧嘩や親友との決別だったり…。振り返ってみると、あの「決断」と「撤回(決断の撤回の決断)」が人生の分岐点だった、という記憶もあるかもしれません。
今までの人生を振り返ってきて、一度決めたことの撤回は、どのくらいしてきたでしょうか?
たくさんやってきた、という人もいれば、もしかすると、したかったのにできなかった、という体験もたくさんあるかもしれません。
もちろん撤回はするべきだ、してはいけない、したほうがいい…という単純な話にはなりません。その時々の最善手が「その決断(撤回しないという決断を含めて)」です。
でも、もし、撤回したほうが「絶対に良い!」という確信があるにも拘わらず、撤回できない、ということがあれば一度立ち止まった見てもいいかもしれません。今後もきっと「撤回したほうが絶対に良い」という瞬間がやってくるでしょうから。
さて、撤回したほうが絶対良い、と思っていたのに、撤回できなかった…。
その時、何が自分を邪魔したのでしょうか?
- 一度、愚かな決断をしてしまったことの恥ずかしさ、でしょうか?
- 一度決めたことを覆す、後ろめたさでしょうか?
- 一度決めたことを、誰かの意見で変えることへの敗北感でしょうか? ……
色々な理由が浮かんでくると思います。
その理由の裏には、どのような感情が隠されているでしょうか?
撤回を妨げる感情。その感情の目的は?
『嫌われる勇気』でも紹介されているように…アドラー心理学では、「目的」からアプローチしていきます。「原因」→「結果」というアプローチは許してくれません。
原因を理由に結果を説明することはできないのです。例えば、次の言い方はどうでしょうか?
「恥ずかしいから、撤回できない」
↑の言い方だと、恥ずかしいという理由・原因があって、撤回できない、という結果を導き出すストーリーになりますが、これではアドラー心理学は納得しません。
「恥ずかしさ」や「後ろめたさ」や「敗北感」といった感情には、どのような「目的」が隠れているのでしょうか?
この感情(例えば、恥ずかしさ)の目的に目を向ける視点があれば解決まであと少しです。
どんな目的があるのでしょう?
「目的」は人それぞれだと思います。
- 撤回することで、嫌われるかもしれない…それは嫌だ、嫌われたくない!
- 撤回することで、達成できなくなるかもしれない…それは嫌だ、失敗したくない!
- 撤回することで、自分の責任がよりはっきりと浮かび上がるかもしれない…それは嫌だ、自由でいたい!
- 撤回することで、自分の能力を疑われるかもしれない…それは嫌だ、無能だと思われたくない! ……
目的に目を向ければ、より深く、自分の決断・撤回に影響を与えた感情(↑の例では「恥ずかしさ」から4つの目的を引き出しました)を見つめることができます。
ただし、いくら目的から考えるといっても、自分がその時感じた「感情」を敵視する必要は全くありません。
感情のナビゲーション機能
感情はあなたを振り回すものではありません。「感情」はあなたの「目的」に沿って行動を導いてくれるナビゲーターです。
「撤回できない」ことの裏には、様々な目的が見え隠れしています。その目的を達成するために(「撤回しない」という決断を実行するために)「感情」を利用しているのです。
利用できるのもなのであれば、「感情」は敵として付き合うことも、私たちが活用できるスキルとして仲間とすることもできます。
どのような時に、どのような感情を感じるでしょうか?
感情が現れたときはチャンスです!
自分が持っている「目的」が何なのか、一歩近づくことができるのですから!
撤回することはスキル
「撤回する」という決断を下せることは、スキルです。
スキルである以上、上達させることができます。
「俺は、一度決めたら変わらないから!」
ではないのです。スキルなのですから、「変えられる」「上達させられる」はずです。
もし一度決断はしたけれど、間違ってしまった…いえ、明らかに間違ってしまっている…絶対に違う!と確信を持った時は、撤回する方向で考えていきましょう。
撤回したほうが、明らかに「お得」なのですから!
もし頭では薄々感じているのに、それでもできないときは、
「何が原因で撤回できないか」
ではなく
「撤回を拒むその目的として、どんなことがあるのか?」
を考えてみましょう。
感情に流されて(と言い訳して)、押し切られて(と言い訳して)、わざわざ有益な行動ができないのは、もったいありません。
撤回を拒む感情を生み出すその裏側にある「目的」とは何か。
そこを見つめていきましょう。
「グダグダ、くだらないこと偉そうに言いやがって…。むかつくんだよ!」
(今、感情が生まれました!! その感情の裏側にある目的は一体なんでしょうか?)
★今日の試してみたいことメモ★
- 決断してしまったけれど、実は、止めた方がいいと実は思っていたこと(思っていること)があったにも拘わらず、撤回できなかったものがなかったか振り返ってみる。
- どのような感情で撤回できなかったか、思い出してみる。
- その感情は、自分のどのような目的が影響しているか、考えてみる。
- (まだ間に合うのであれば、撤回する)